デザインとアートの違い

【デザインとは】デザインとアートの違いからデザインの意味を考える

そもそもデザインとは何か?ということを考えていくと難しいものがあります。

デザインという言葉の意味が意外と広く、意味が抽象的で曖昧な印象だからです。

今回は、デザインとアートの違いを通じてデザインの意味を考えてみました。

1.デザインとアートの定義

1-1 デザインの定義

goo辞書(デジタル大辞泉) デザイン(design)の解説

(1)建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で、実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。「都市をデザインする」「制服をデザインする」「インテリアデザイン」

(2)図案や模様を考案すること。また、そのもの。「家具にデザインを施す」「商標をデザインする」

(3)目的をもって具体的に立案・設計すること。「快適な生活をデザインする」

(1)と(2)の意味が日本で一般的に使われている「デザイン」という言葉のイメージに合っています。

(3)の意味で「デザイン」という言葉が使われている場面も目にすることがあります。後述する「デザイン思考」の「デザイン」は(3)の意味に近い使われ方です。

1-2 アートの定義

goo辞書(デジタル大辞泉) アート(art)の解説

芸術。美術。「ポップアート」

辞書の説明がシンプル過ぎてデザインとの違いが明確ではありません。

辞書の定義からはデザインとアートの違いがわかりにくいため、別の角度からデザインとアートの違いを明確にしていこうと思います。

2.デザインとアートの違い

デザイン思考とアート思考

2-1 デザイン思考とアート思考

近年、新しいアイデアを生み出すための思考方法として注目されているのが「デザイン思考」と「アート思考」という考え方です。

「デザイン思考」とは、デザイナーによるデザイン制作における思考方法を用いて、新しいアイデアを生み出す思考プロセスのことをいいます。

「アート思考」とは、アーティストが作品を創り出す思考方法を用いて、新しいアイデアを生み出す思考プロセスのことをいいます。

両者を比較することで、デザインとアートの違いを考えてみます。

(a)デザイン思考

デザイン思考では、ユーザーを深く理解することにより、ユーザーの潜在的な課題にアプローチし、その課題の解決策を生み出します。

デザイン思考のプロセスにはいくつかの種類があります。

次に示すデザイン思考のプロセスは、Smart Stage「デザイン思考5つのステップ」の記事を参考にしました。

STEP1 共感

インタビューや行動観察を通して、ユーザーの悩みや課題を理解すること

STEP2 問題定義

ユーザーにとって本当の問題(課題)は何か、何を望んでいるかの概念化(言語化)

STEP3 創造

ユーザーの問題やニーズを解決するためのアイデア出し

STEP4 プロトタイプ

アイデアを実現するプロトタイプ(試作品)を一旦制作する

STEP5 テスト

プロトタイプに対するユーザーからフィードバックにもとづく改善・ブラッシュアップ

(b)アート思考

アート思考では、自分を起点に、価値観の再定義を繰り返しながら、自分なりの答えを描き出します。

アート思考のプロセスもいくつかの種類が提案されています。

次に示すアート思考のプロセスは、NTT DATA「アート思考~先行きが不透明な時代の思考法~」の記事を参考にしました。

STEP1 自分を起点にする

自分の些細な気づきや、違和感、小さな疑問等を大切にする。「正解は何か」ではなく、「自分がどう解釈したか」を起点にする。

STEP2 アウトプットする

言語だけでなく、身体全体を使って、感じたこと、思ったこと、考えたことをアウトプットしてみる。「正しい答え」ではなく、「自分なりの答え」を追求する。

STEP3 価値観を再定義する

アウトプットに対して、他の人からフィードバックを受ける。あるいは「もし他の時代だったら?」「他の文化圏だったら?」など、異なるコンテキストに置いてみる。自分が常識だと思っていた価値観を相対化することにより、新たな気づきを得て、価値観を再定義する。

(c)デザイン思考とアート思考の比較

デザイン思考ユーザー起点
アート思考自分起点
デザイン思考とアート思考の比較

デザイン思考では、ユーザーのニーズを起点にアイデアを創出するのに対して、アート思考では、実現性やニーズに関係なく、自分の自由な発想を起点にアイデアを創出します。

意匠法と著作権法

2-2 意匠法と著作権法

デザインを保護する法律として「意匠法」があり、アートを保護する法律として「著作権法」があります。

両者を比較することで、デザインとアートの違いを考えてみます。

(a)意匠法

意匠法の「意匠」の定義

「意匠」とは、物品の形状、模様、色彩、これらの結合(以下「形状等」という。)、建築物の形状等、又は画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう(意匠法第2条第1項)。

意匠法は、物品等の外観(形状、模様、色彩、これらの結合)を保護する法律です。

上記の意匠の定義には、ユーザーの視点が入っていません。

しかし、意匠法で保護を受けるためには、同一のものを量産できること(量産性)が必要であり、一品制作のものは意匠法で保護されません。この点で、一品制作の著作物も保護される著作権法と異なります。

このような観点から、意匠は多くのユーザーの目に触れる物品等に施されることが前提となっています。

「美感を起こさせるもの」には機能美と装飾美が含まれます。

機能美は、機能を追求した結果、美しくなることであり、 装飾美は、装飾を施すことにより美しくなることです。

意匠法では、見た目の美しさだけでなく、ユーザーの使い心地や使い勝手がよいものも保護されます。

(b)著作権法

著作権法の「著作物」の定義

「著作物」とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう(著作権法第2条第1項第1号)。

上の条文には誰の思想又は感情とは記載されていませんが、著作者(創作者)の思想又は感情を伴っていることが「著作物」と認められるための条件となります。

「著作者の権利」には、人格的利益 (精神的に傷つけられないこと)を保護するための「著作者人格権」と、財産的利益 (経済的に損をしないこと) を保護する「著作権(財産権)」の二つがあります。

著作物には著作者の思想や感情が色濃く反映されているため、第三者による著作物の利用態様によっては著作者の人格的利益を侵害するおそれがあります。このため、著作権(財産権)だけでなく著作者人格権も著作者の権利として認められています。

このように著作権(財産権)だけでなく著作者人格権も認めている点が、意匠権(財産権)だけを認めている意匠法と大きく異なります。

(c)意匠法と著作権法の保護対象の比較

意匠法多くのユーザーの目に触れる物に施されたもの
著作権法著作者の思想又は感情を創作的に表現したもの
意匠法と著作権法の比較

意匠法では、多くのユーザーの目に触れる物に施されたものを保護するのに対して、著作権法では、著作者の思想又は感情を創作的に表現したものを保護します。

2-3 ユーザーの求めているものを意識するか否か

以上の比較から、「デザイン」はユーザーが持つ問題を深く理解し、問題を解決することであると考えられます。

また、「アート」はアーティストが自身の興味・好奇心・疑問に対する答えを探究し、その答えとして思想・感情を創作的に表現することであると考えられます。

従って、「デザイン」と「アート」を分ける基準の一つは、創作する者がユーザーの求めているものを意識するか否かです。

3.ユーザーの求めているものとは?

デザイナーは、ユーザーが求めているものを考える必要がありますが、「ユーザーが求めているもの」が何かを探すことは簡単ではありません。

「ユーザーが求めているもの」について考えてみました。

3-1 シンプル

多くのユーザーに受け入れられるデザインとして、まず、シンプルなデザインが思い浮かびます。

シンプルなデザインは、必要な機能以外の無駄なものを可能な限り削ぎ落していく作業を行っていくことになります。

スティーブ・ジョブズも次の言葉を残しています。

Design is not just what it looks like and feels like. Design is how it works.
デザインは単にどう見えるかやどう感じるかではない。デザインはどのように機能するかだ。

3-2 個性

多くのユーザーに受け入れられるもの(万人受けするもの)を目指すと、個性がないものができてしまうおそれがあります。

個性がないものは面白くなく、結局、誰からも受け入れられないものになってしまいがちです。

価値観が多様化している現代、万人受けするものよりも特定のユーザーに強烈に受け入れられるようなものを目指すことが個性を出すための解決手段の一つです。

具体的なユーザー(ペルソナ)を想定し、そのユーザーに向けてデザインすることで、個性が出て結果的に多くの人に受け入れられるということもあり得ます。

3-3 ユーザーの求めているものを考えない

ユーザーの求めているものを考えすぎず、思い切って自分が好きなものを追求していくことが面白いデザインを創り出す手段の一つかもしれません。

ジブリの宮崎駿監督が「ヒットするかどうかを考えるとダメなんだ。そんなことを考えるとヒットしない」というようなことをテレビ番組(確か宮崎監督の密着ドキュメントのような番組)で言っていた記憶があります。

(正確な発言は忘れました。また、テレビ番組の動画を探してみましたが見つかりませんでした。すみません。)

上述したアート思考の考え方からすると、宮崎監督の発言は正解ということになります。あまりにもユーザー(映画の場合は観客)の欲求を考えすぎると、自分の価値観がぶれてしまいます。

デザインにも当てはまります。自分自身もユーザーの一人なので、自分の求めているものを追求することによって面白いものが出来上がるかもしれません。

4.まとめ

デザインとアートの本質的な違いについては、ある程度明確になったと思います。

しかし、良いデザインとは何かという問いに対しては、正直に言って正解が分かりません。正解がないのかもしれません。

結局、ユーザーのことを深く考え、自分の価値観を深く考えることが大事なんだと思います。

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