ネーミングのコツ

「ネーミングのコツ」と「人が名前を認識するときの3つの要素」

人物、グループ、動物、会社、商品、サービス、イベントなど、さまざまな対象に名前が付けられています。

人はそれらの名前を眼と耳で知覚します。

そして、人は眼と耳で知覚した名前を3つの要素にもとづいて認識します。

3つの要素が「外観(がいかん)」「称呼(しょうこ)」「観念(かんねん)」です。

今回は「3つの要素」と「ネーミングのコツ」について紹介します。

是非、ネーミングのヒントにしてみてください。

目次

1.人が名前を認識するときの3つの要素

(1)人は視覚・聴覚を通じて名前を認識する

人は視覚および聴覚を通じて名前を認識します。

  • 人が名前の文字を眼で見る場合
  • 人が名前の音を耳で聞く場合
  • 人が眼と耳で名前の文字と音を同時に知覚する(見て聞く)場合

があります。

人が名前の文字を眼で見た場合、名前の文字の外観(見た目)を認識します。

外観」が「人が名前を認識するときの1つ目の要素」です。

人が名前の音を耳で聞いた場合、名前の称呼(名前を読んだときの音)を認識します。

称呼」が「人が名前を認識するときの2つ目の要素」です。

人が眼と耳で知覚した名前の文字と音を通じて名前の観念(意味内容)を認識します。

観念」が「人が名前を認識するときの3つ目の要素」です。

  • 外観=名前の文字の見た目
  • 称呼=名前を読んだときの音、名前の読み方
  • 観念=意味内容、名前から生じる考え

(2)商標の類似は外観、称呼、観念で判断する

商標(文字、図形、記号、立体的形状、色彩、それらの組み合わせ、音などを構成要素とした識別標識)が類似しているか否か(2つの商標が似ているかどうか)は、商標の外観、称呼、観念にもとづいて判断されます。

商標の類似を外観、称呼、観念にもとづいて判断することは、商標法のどの教科書にも記載されています。

特許庁や裁判所においても、商標の外観、称呼、観念にもとづいて商標が類似しているか否かを判断しています。

・外観の類似

「ライオン」と「テイオン」は外観が類似

「大森林」と「木林森」は外観が類似

・称呼の類似

「セレニティ」と「セレリティ」は称呼が類似

「MSM」と「NSM」は称呼が類似

・観念の類似

「太陽」と「SUN」は観念が同一

「東京つ子」と「江戸子」は観念が類似

※なお、特許庁においては、原則として、商標の外観、称呼、観念に基づいて画一的に両商標が類似しているか否かが判断されますが、裁判所においては、実際の取引の実情などを考慮した上、個別具体的に両商標が付された商品又は役務の出所の混同が生じるか否かが判断されます。この点については、ネーミングのヒントとは直接関係がないため、詳しい説明を割愛します。

(3)名前と商標の関係

・商標は、文字、図形、記号、立体的形状、色彩、それらの組み合わせ、音などを構成要素とした識別標識(マーク)です。

一方、名前は文字だけで構成されています。(芸能人の芸名やグループ名は文字と記号で構成されているものもあります)

つまり、名前は商標の構成要素のうちの「文字」だけを構成要素としたものです。

・商標は会社、商品、サービスに付されるマークです。

一方、名前は人物、グループ、動物(ペット)、会社、商品、サービス、イベントなど、さまざまな対象に付されます。

今回の記事は「ネーミングのコツ」をテーマにしていますので、「文字」だけに着目しています。

2.ネーミングのコツ

一般的なネーミングのコツを列挙します。

  • 読みやすい(難しい言葉を避ける)
  • 言いやすい(語呂が良い、発音しやすい、4文字?)
  • 聞き取りやすい
  • 覚えやすい(短い言葉、既存の単語)
  • 忘れにくい(インパクト、個性、イメージ化、ストーリー)
  • 良い意味内容である(ネガティブな意味がない)
  • 他の名前と似ていない

(1)読みやすい

難しい言葉を避ける。例えば、難しい漢字、難しい英単語は避ける。

(2)言いやすい(発音しやすい)

発音しやすく、語呂が良い言葉がよい。

日本人にとって4文字の言葉が発音しやすく語呂がよい言葉というのをよく聞きます。

確かに日本語には4文字の言葉が多いですし、長い言葉を省略するときも4文字の言葉に省略していることが多く、馴染みのある言葉のような気がします。

ただ、3文字や5文字もそれなりに語呂がよいような気もします。

ここでは、3文字~5文字程度が発音しやすいとしておきます。

(3)聞き取りやすい

相手が聞き取りやすい言葉がよい。

珍しい名字は、その名字と発音が似た、よくある名字と聞き間違われやすいようです。名字の場合は仕方ないですが、ネーミングする際は聞き間違われにくい名前の方が有利になります。

(4)覚えやすい

一般的には、短い単語(言葉)が覚えやすい。また、造語よりも既存の単語の方が覚えやすく、しかも誰でも知っているような単語の方が覚えやすい。

(5)忘れにくい

インパクトのある言葉、個性のある言葉、イメージ化しやすい言葉、ストーリー性のある言葉が忘れにくい。

(6)良い意味内容である

一般的にポジティブな意味の方が好まれます。ただし、音楽グループなどはインパクトや個性を重視して、あえてネガティブな意味の言葉を選ぶ場合があります。

(7)他の名前と似ていない

上述したように名前の外観、称呼、観念にもとづいて判断します。「外観の類似」「称呼の類似」「観念の類似」の例を参照してください。

これらは他人(例えば顧客、消費者)から見た良い名前を付けるコツです。 名前を付ける人の「強い思い」のような主観的な要素は含んでいません。

3.「3つの要素」と「ネーミングのコツ」の関係

(1)「外観」とネーミングのコツ

外観の意味 goo辞書

外観とは外側から見た感じ。表面に見える姿。

商標の場合、主に図形、記号など(例えばロゴマーク)の外観(見た目)が商標の印象に大きく影響します。

一見、文字の場合は、文字の外観が名前の印象に影響しないように思われます。

しかし、名前の文字の外観も名前の印象に影響します。

・書体、フォント

フォント

上の画像のように、フォントによって文字の印象が変わります。

デザイン性の高い書体になればロゴマークに近くなってきます。

・ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字

名前が「ひらがな」「カタカナ」「漢字」「ローマ字」のいずれで表記されるかにより名前の印象が大きく変わります。

「ひらがな」は文字の丸っこい形から柔らかい優しい印象を与えます。

「カタカナ」は文字の角ばった形からシャープで軽快な印象を与えます。

「漢字」は真面目で堅い印象を与えます。

「ローマ字」は外国語っぽい印象を与えます(当たり前ですが)。

「ひらがな」「漢字」は文章中に埋もれてしまうおそれがありますが、「カタカナ」「ローマ字」は文章中に埋もれずに強調される効果があります。

最近、「YOASOBI」という音楽ユニットが流行っています。

YOASOBIはローマ字表記ですが、これを「ひらがな」「カタカナ」「漢字」表記にすると印象が大きく変わります。

  • YOASOBI
  • よあそび
  • ヨアソビ
  • 夜遊び

・スペルの変化

単語のスペルを変えることで見た目のインパクトをつけることができます。

「キセキ」など多数のヒット曲を持っている有名な音楽グループ「GReeeeN」。本来のグリーンのスペルは「Green」ですが、eの数を4つにするとともに「R」と「N」を大文字にして見た目のインパクトをつけています。

calcha 「GReeeeN(グリーン)メンバーの年齢、名前、意外な経歴とは…?

上の記事に「GReeeeN」のグループ名の由来が記載されています。この記事によれば、

「グループ名のGReeeeNの由来は『新人未熟者』を表す『Green Boy』という造語からだそうです。『まだまだ未完成であり続ける未知の可能性』という意味がGReeeeNに込められています。『e』の数はメンバーの人数を表していて、ロゴマークは歯科部出身、在籍していることから笑顔になる時に見える歯並びをイメージして口角が上がった形になっています。」

由来を聞くと「eeee」が歯に見えてきます。

Greenという言葉自体は馴染みのある言葉で覚えやすく、GReeeeNという見た目のインパクトとストーリー性によって、忘れにくいグループ名になっています。

・顔文字

(^▽^) (´。•ㅅ•。`) (人´∩`)

顔文字は基本的に記号を用いて描いていますので名前ではないです。文字を使って顔文字のような感じにならないか、考えてみました。例えば

TooT

特に意味はなく、形だけです。ちょっとTOTOみたいですが。

大西拓磨さんのツイッターより

大西拓磨さんのTwitterのリツイートに載っていた画像です。

文字の読み方や意味は全く関係なく、形だけで選ばれた文字の配列です。名前とは関係ありませんが、面白いですね。

・ネーミングのコツとの関係

文字の外観は見た目のインパクトに影響します。見た目のインパクトによって忘れにくくなる可能性があります。

(2)「称呼」とネーミングのコツ

称呼の意味 goo辞書

物事の呼び方。呼び名。呼称。

人は名前の称呼を音で聞いた場合、その音で名前を認識します。

従って、人が聞き取りにくい言葉は、名前として避けた方がよいことになります。

人は名前の文字を眼で見た場合も、知っている文字であれば、その文字の称呼(読み方)を頭の中で響かせます。

文字が知らない文字であれば、人は文字を単なる記号として頭の中で処理します。

頭の中で単なる記号として処理されれば、人に名前を憶えてもらえません。

従って、日本人が読めない文字(例えばアラビア文字)、一般の人が読めない難しい漢字、難しい英単語は、名前として避けた方がよいことになります。

・音象徴

音によってイメージするものに影響がでる現象のことを音声学で「音象徴(おんしょうちょう)」と言うそうです。

日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ 「声に出したくなる⁉音象徴の世界

上の記事には、角ばった図形と丸っこい図形に名前を付ける場合、どちらを「タケテ」とし、どちらを「マルマ」とするかという実験を行った場合、多くの人が角ばった図形を「タケテ」という名前を付け、丸っこい図形に「マルマ」という名前を付けた、ということです。

これは外国で行われた実験です。日本人の場合、マル(丸)という言葉に引きずられて丸っこい図形に「マルマ」を名付けそうですが、日本人だけでなく外国でも名前から同じような印象を持つようです。

上の記事では、

「阻害音は「角ばった」や「近寄りがたい」イメージになり、共鳴音は「丸っこい」や「親しみやすい」イメージにつながる」

「濁音は「大きい」「重い」「強い」といったイメージを与える」

ということが記載されています。

音によってイメージが変わることは感覚的にはわかりますが、具体的に説明するのは難しいものです。上記の記事では、「母音のイメージ」なども記載されています。上記の記事の研究は実に興味深いです。

・音から連想されるイメージ

TBS 「名前を聞いたら浮かんでくるイメージは?音から連想されるイメージを徹底解析

上の記事では、2人の男性の写真を見せて、どちらが「しゅんすけ」かというアンケートをとった場合、爽やかな感じの男性が「しゅんすけ」と答えた人が多かった、ということが記載されています。

上の記事では、「「さ行」から始まる名前は爽やかネーム」「濁点が入っている名前はパワフルネーム」「「ら行」の名前は高根の花ネーム」「「あ行」の名前は安心ネーム」ということが記載されています。

このような音とイメージの関係についても面白いです。

・ネーミングのコツとの関係

称呼は、ネーミングのコツの「読みやすい」に影響します。

また、「言いやすい」「聞き取りやすい」に影響します。日本語は、基本的に、母音だけ、子音+母音の組み合わせで構成されているので、このような日本語の発音体系の言葉が言いやすく、聞き取りやすい言葉だと思います。

また、音によってインパクトを付けることも可能かもしれません。

「きゃりーぱみゅぱみゅ」さんは、あえて発音しにくい名前にしてインパクトを付けています。

(3)「観念」とネーミングのコツ

観念の意味 goo辞書

  • 物事に対してもつ考え。
  • 哲学で、人間が意識の対象についてもつ、主観的な像。表象。心理学的には、具体的なものがなくても、それについて心に残る印象。

「観念」が人に名前を覚えてもらう場合の重要な要素になります。

・観念とイメージ、概念

イメージの意味 goo辞書

心に思い浮かべる像や情景。ある物事についていだく全体的な感じ。心像。形象。印象。また、心の中に思い描くこと。

概念の意味 goo辞書

物事の概括的な意味内容。

私は、イメージ、観念、概念という言葉の意味の違いについて明確にわかっていませんでした。

今回調べてみたところ、イメージ→観念→概念という順に徐々に抽象的、客観的な考えになるようです。

イメージ、観念、概念

excite辞書の「イメージとは・意味」によれば

「イメージは、以前に知覚された、いくつかの感覚的性質を伴う対象についての心的表象。」

「観念はイメージと違って潜在的な一群の判断から成っている。」

「この判断の要素が強められ、観念のうちに含まれているイメージ性が除去されるとき、そこに得られるのが概念である。」

・記憶とイメージ

言葉をイメージ化して記憶する記憶法(記憶術)があります。

裏を返せば、イメージ化できる言葉は忘れにくいということになります。

また、イメージがより具体的なものほど、忘れにくくなります。

例えば、彼岸花(ひがんばな)という言葉を見たり、聞いたりすれば、あの赤い花のイメージが浮かんできます。群青という言葉を見たり、聞いたりすれば、色のイメージが浮かんできます。

人が名前を見たり聞いたときにイメージ(イメージは人によって若干異なるかもしれません)が浮かんでくる言葉は、人が覚えやすい言葉であり、忘れにくい言葉であるということになります。

造語にはイメージがありません。特に複数の言葉(単語)を組み合わせて造った造語ではなく完全な造語は、人が初めて接する言葉なので、イメージの湧きようがありません。

また、日本人が知らないような外国語の言葉は造語ではありませんが、日本人が初めて接する言葉なので、イメージが湧きません。

このように、造語や日本人が知らない外国語の言葉は、覚えにくい名前ということになります。

しかし、造語の名前が人の記憶に定着すれば、他の名前から明確に区別されるため、個性的で目立つ名前になります。

・ネーミングのコツとの関係

観念は、ネーミングのコツの「覚えやすい」「忘れにくい」に影響します。

4.「3つの要素」以外の要素

実は、人は上述した3つの要素以外の「味」「匂い」「肌触り」という要素からも名前を認識することができます。

(1)味(味覚)

人は、食品、調味料、飲食店の料理、飲み物(水、お茶、ジュース、お酒など)の味からそれらの名前を認識することができる場合があります。

味と商品の名前が結びついたら、強烈な印象を残していることになるため最強です。

この場合も、商品の味に合ったピッタリの名前であることが理想的です。

(2)匂い(嗅覚)

香水に代表されるように、匂いから名前が浮かぶこともあります。

香水以外にも、洗剤、シャンプーなど匂いに特徴のある商品は多くあります。匂いと商品の名前が結びついた場合も最強です。

(3)肌触り(触覚)

肌触りだけで商品(例えば、服、タオルなどの繊維)の名前が思い浮かぶことは難しいように感じます。

特徴的な肌触り(手触り)の商品(例えばスライム)があれば面白いと思います。

5.まとめ

何十回も聞いたのに覚えられない名前もあれば、2、3回聞いただけで覚えられる名前もあります。

人にすぐに覚えてもらい、忘れにくい名前が理想的です。

上に書いたことを参考にしていただければ幸いです。

上には書いていませんが、その他のネーミングのコツとしては、

・名前が人物、会社などのイメージに合っているかどうか

・名前が商品・サービスの内容に合っているかどうか

・名前が商品・サービスの顧客層に合っているかどうか

・名前が時代の流行り廃りの傾向に合っているかどうか

・名前が日本だけでなく、外国でも受け入れられるか

などの要素もあります。

ネーミングのコツとして挙げたものに合う名前であっても、多くの言葉から選ぶ必要があります。

ここまで書いてなんですが、最終的にはネーミングをする人の感性、感覚が重要ということになります。

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