ビジネスフレームワークは不要?

【ビジネスフレームワークは不要?】フレームワークが使えないと感じる理由

情報を整理するためのツール(道具)としてビジネスフレームワーク(以下、単にフレームワークという)と呼ばれるものがあります。

有名なものとしては、ロジックツリー、SWOT分析、4P分析などです。

フレームワークと呼ばれるものは数多くあり、これらのフレームワークを見たり聞いたりしたことがある方が多いと思います。

しかし、フレームワークをなかなか使いこなせない、使い方がわからないと感じる人が多いようです。

私自身もフレームワークの中に「なるほどな~」と納得するものと「うまく使えないな」と感じるものがあります。

なぜ、「使えない」と感じてしまうのか、どうすればよいのかを考えてみました。

目次

1.フレームワークとは

フレームワークとは
フレームワークとは枠組み

フレームワーク(framework)とは、課題解決、分析、戦略立案などを考える際に用いる枠組みです。

例えば、課題(問題)を整理するフレームワークとしては、ロジックツリーが代表的です。

マーケットの分析に用いるフレームワークとしては、3C分析、SWOT分析などがあります。

戦略立案のフレームワークとしては、STP、ポジショニングマップなどがあります。

2.情報の整理の重要性

ただ漫然と情報を集めて考えるだけでは、何が重要で何が重要でないのかがわからなくなり、考えがまとまらなくなってしまいます。

何かを考え、何かを分析する場合に、フレームワークを利用して情報を整理することで、どのように考え、どのように情報を整理するべきかが明確になり、論理的な思考を行うことができます。

また、チームやグループで課題解決をしたい場合、メンバー間に認識のずれが生じていると課題解決の障害になり得ます。

フレームワークを利用して情報を整理することで、メンバー間の共通認識を作ることができ、メンバー間で課題を共有し、課題解決に向けてスムーズに作業を進めていくことができます。

3.フレームワークが使えないと感じる理由

3-1 状況や目的によって最適なフレームワークが異なる

フレームワークはさまざまな種類のものがありますが、個々の状況や目的によって使用するフレームワークが異なります。

また、フレームワークは万人が使えるように作られた枠組みですので、自身の状況や目的にピッタリ合ったフレームワークが見当たらないと感じることがあります。

3-2 個々の性格・好みの違い

多くの方が試験勉強(受験勉強)のときに情報の整理の重要性を感じていると思います。

しかし、勉強の方法は人それぞれで個々の性格や好みで大きく異なります。

難関大学の合格者が勉強法を公開していることがありますが、多くの方がその方法を参考にしつつも自分なりの方法にアレンジしていると思います。

それは自分の性格や好みにピッタリ合うと感じていないからです。

また、ノートの付け方も人それぞれです。

先生が黒板に書いたものをそのままノートに書く人、要点だけを書く人、教科書や参考書に書き込んでノートには何も書かない人などさまざまです。

勉強ができる人は自分なりの勉強方法を確立しています。

また、クリエイターは新しいものを創作するときに情報を整理する必要がありますが、情報の整理の仕方はクリエイターごとに異なります。

例えば、小説家は小説を書くときに物語に関する情報を収集し、収集した情報を整理しますが、その方法も人それぞれです。

有名な小説家の方法をまねすれば人気の小説を書けるというものではありません。 自分なりの独自の方法を編み出すことが重要となってきます。

4.解決策

4-1 使えると思うものは使う

自分にとって有用である(役に立つ)と感じるフレームワークがある場合、そのようなフレームワークはそのまま使っても良いでしょう。

役に立つフレームワークをそのまま使う方が効率が良いはずです。

4-2 自分でフレームワークを作る

自分の目的に合ったフレームワークが見つからない場合、自分で自分専用のフレームワークを作る必要があります。

フレームワークを作るときも、0からフレームワークを作るよりは既存のフレームワークを組み合わせたりカスタマイズしたりして作る方が効率が良いと思います。

具体例

例えば、マーケティング環境を分析するときに用いるフレームワークとして3C分析というものがあります。

フレームワークのカスタマイズ
3C分析

3Cとは「Customer(顧客)」「Company(自社)」「Competitor(競合)」の3つの頭文字をとったもので、マーケティング環境を把握するために使用します。

顧客の視点としては、顧客のニーズ、顧客の購買行動、市場規模、市場の成長性などの情報を収集します。

自社の視点としては、自社の商品・サービスのコンセプト、自社の商品・サービスの売上、シェア、ラインナップ、特徴、強み、弱み、認知度、資本力、リソースなどの情報を収集します。

競合の視点としては、競合会社の商品・サービスの売上、シェア、ラインナップ、特徴、業界ポジションなどの情報を収集します。

これらの情報から自社の取り巻く市場・業界の環境を分析します。

しかし、3Cはマクロ的な市場環境の分析ですので、各要素を詳しく分析したいときは、ほかのフレームワークを組み合わせる必要があります。

SWOT分析
SWOT分析

例えば、自社の強み・弱みを把握する場合、SWOT分析を利用するのが一般的です。

SWOT分析では、縦軸が「内部環境」と「外部環境」、横軸が「プラス要因(好影響)」と「マイナス要因(悪影響)」で構成されるマトリクスを作成します。

そして、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4象限に該当する情報を書き込んでいきます。

これにより、自身(自社)を取り巻く状況を知ることができます。

そして、「強み×機会」の情報から、自社の強みを活かして積極的に攻める戦略を考えます。

また、「弱み×機会」の情報から、自社の弱みを改善する戦略を考えます。

また、「強み×脅威」の情報から、強みを活かして脅威(競合)に対抗する差別化戦略を考えます。

さらに、「弱み×脅威」の情報から、自社がやらないもの、撤退するものについて考えます。

このように、SWOT分析では、自社の取り巻く状況を把握し、戦い方(戦略)を考える場合に有効です。

上記では、フレームワークの組み合わせてオリジナルのフレームワークの作り方の一例を示しましたが、フレームワークをカスタマイズしてもよいですし、0から自分でフレームワークを作っても構いません。

自分に合ったフレームワークが作ることができれば、フレームワークを使いこなせないといった問題は起こり得ません。

5.まとめ

フレームワークの中でも使えるものはそのまま使い、使いにくいものは自分の目的に合ったフレームワークを自分で作ることをおすすめします。

また、フレームワークを作る際も既存のフレームワークを利用した方が効率が良いです。

従って、フレームワークを知っておいても損はないと思っています。

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ネーミングの手順

【会社・商品・サービスの名前の決め方】ネーミングの基本的な手順を解説

会社・商品・サービスの名前は、その名前の使用を開始した後で変更したいと思っても面倒な手続きが生じることがあります。

会社名(商号)の場合、定款の変更など様々な手続きが必要になりますし、商品名・サービス名の場合も、パッケージや看板等の変更が必要になることがあります。

会社・商品・サービスの名前は、使用をする前に慎重に検討することが必要です。

今回は、会社・商品・サービスの名前の決め方について基本的な手順を解説します。

是非、参考にしてみてください。

目次

1.コンセプト、テーマなどを決める

コンセプト、理念、ビジョンなど

1-1 会社名(商号)の場合

言葉の数は無数にありますし、造語を含めると無限とも思えるほどの数になります。

名前を決める際に何か手掛かり(とっかかり、ヒント)がないと、なかなか決めることができません。

会社名の場合、手掛かりになり得るのが、会社のコンセプトテーマ理念ビジョンなどです。

  • コンセプト
  • テーマ

コンセプトとは「企画・広告などで、全体を貫く基本的な観点、考え方」(Oxford Languagesの定義)

ビジネスを始める(会社を立ち上げる)上で、コンセプトはビジネスを成功させるための大変重要な要素です。

会社が「誰に」「何を」「いつ」「どこで」「どのように」価値を提供するのかを決めておく必要があります。

会社のコンセプトを決めることで、会社の強み・独自性を明確にすることができます。

また、会社のコンセプトを決めることで、顧客に提供する価値の一貫性を持たせることができます。

コンセプトに似た言葉としてテーマという言葉があります。

テーマとは「主題。芸術作品、研究、議題などの中心となる思想内容」

コンセプトとテーマは言葉のニュアンスや使われる場面が異なります。

コンセプトの意味や、コンセプトとテーマの違い、コンセプトの作り方については、

コンセプトの意味や「テーマ」との違いは?なぜコンセプトが必要なの?わかりやすく解説します」という記事が参考になります。

  • 理念
  • ビジョン
  • イメージ
  • 思い、想い
  • 商品・サービス

会社を立ち上げるときに、コンセプトやテーマのほかに、会社の理念ビジョンを決めている会社があります。

理念とは「事業・計画などの根底にある根本的な考え方」(Oxford Languagesの定義)

ビジョンとは「理想像。未来像。展望。見通し。」(Oxford Languagesの定義)

例えば、AMAZON.COM INCの企業理念は「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」

イオン株式会社の企業理念は「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」

ソフトバンク株式会社の経営理念は「情報革命で人々を幸せに」、ビジョンは「『世界の人々から最も必要とされる企業グループ』を目指して」

理念やビジョンは、コンセプトよりも抽象的な考え方です。

ビジネスを始める際に理念やビジョンまで決めていないかもしれません。

しかし、会社の理念やビジョンを決めておくことで、会社が発信するイメージメッセージ、キャッチコピーなどに統一感を持たせることができます。その結果、会社の企業価値やブランドの向上につながります。

会社の理念ビジョンイメージメッセージも会社名を決める際の手掛かりとなり得ます。

また、会社の創業者の思い(想い)も会社名を決める際の手掛かりとなり得ます。

創業者の思い(想い)は、創業者の主観的な考え、気持ち、意志、願望などのことです。

さらに、会社が提供する商品やサービスの内容も会社名を決める際の手掛かりとなり得ます。

コンセプト、理念などのチャート

コンセプト、テーマ、理念、ビジョンなどは全部決める必要はないかもしれませんが、商品・サービスは当然決めているはずですし、少なくともコンセプトは決めておく必要があると思います。

このような会社として活動していく上で大切にしていることが会社名を決める際の手掛かりとなります。

1-2 商品名・サービス名の場合

  • 商品・サービスの内容
  • 商品・サービスのコンセプト
  • 商品・サービスの強み、アピールポイント

商品・サービスの内容は商品名・サービス名を決める際の手掛かりとなり得ます。

商品・サービスの内容に合った名前の方が顧客に覚えてもらいやすいです。

商品・サービスのコンセプトも商品名・サービス名を決める際の手掛かりとなり得ます。

会社自体のコンセプトと同様、商品・サービスのコンセプトも商品・サービスをヒットさせるための重要な要素となります。

誰に対してどのような商品・サービスを提供するのかを決めておくことはマーケティングの基本です。

商品名・サービスの強みやアピールポイントも商品名・サービス名を決める際の手掛かりとなり得ます。

例えば、商品に入っている特別な成分、料理の特徴的な味、特別な食材、他社が提供していない特別なサービスなども商品名・サービス名を決める際の手掛かりとなります。

2.コンセプトなどに関連する言葉を多数あげる

関連する言葉

1.で決めたコンセプトなどに関連する言葉を数多くあげていきます。

コンセプトなどを直接表現する言葉でもよいですし、コンセプトなどを間接的に表す言葉でもかまいません。

例えば、コンセプトなどのイメージを表す色、音、植物、花、動物、魚など、なんでもかまいません。

また、名詞、動詞、形容詞など、どのような品詞でもかまいません。

なるべく数多くの言葉をあげていきます。

あげた言葉をメモ帳やスマホなどにメモしておきます。

3.会社名・商品名・サービス名の複数の候補をあげる

名前の候補

2.であげた言葉に基づいて、会社名・商品名・サービス名の複数の候補をあげていきます。

2.であげた言葉をそのまま名前の候補にしてもよいと思います。

2.であげた言葉の外国語(英語、その他の言語)に翻訳してみるのもいいかもしれません。

2.であげた言葉を組み合わせたり、所定の文字を変更・追加・削除したりすることで候補となる名前(造語)を作ることも良い方法です。

このようにして複数の名前の候補をあげていきます。

4.候補の絞り込み

3.であげた名前の候補の絞り込みを行います。

絞り込みの方法としては、

(1)ネーミングの法律上のルールを守っているか?

(2)一般的なネーミングのコツに合っているか?

という観点からの絞り込みを行います。

(1)については、会社名(商号)を登記する際のルール、不正競争防止法で定めるルール、商標法で定めるルールです。また、会社名(商号)の場合、その名前のドメインを取得することができるかどうかも重要な判断事項となります。

ネーミングの法律上のルールについては、

「会社名(商号)を決める際の最低限の法律上のルール」

「商品名・サービス名を決める際の最低限の法律上のルール」

を参照ください。

(2)については、一般的なネーミングのコツとして

  • 読みやすい(難しい言葉を避ける)
  • 言いやすい(語呂が良い、発音しやすい)
  • 聞き取りやすい
  • 覚えやすい(短い言葉、既存の単語)
  • 忘れにくい(インパクト、個性、イメージ化、ストーリー)
  • 他の名前と似ていない
  • 商品・サービスの内容に合っていること
  • 顧客層に合っていること

などがあげられます。詳しくは

「ネーミングのコツ」と「人が名前を認識するときの3つの要素」

を参照ください。

5.他人の意見を聞く

自分の考えだけだと、良い名前であるとの思い込みが強くなってしまう可能性があります。

名前の最終決定の前に、家族、友人、知人などの身近な人の客観的な意見を見いてみた方が良いかもしれません。

また、SNSでアンケートをとるのもアリだと思います。

ビジネスアイデア、発明、考案、デザイン(意匠)などは、世間に公開すべきではありません。

世間に公開すると模倣されるおそれがありますし、また、発明、考案、意匠などは権利を取得するための条件として新規性(発明等の内容が新しいこと)が要求されます。

一方、名前(商標)の場合は、商標権を取得するための条件として新規性が要求されません。

また、よほど有名な会社の新商品や新サービスの名前でない限り、世間に公開しても模倣されたり、先に商標登録出願されるおそれは少ないでしょう!

6.最終決定する

以上の手順を踏まえて、最終的に自分が良いと思った名前を決定します。

7.まとめ

コンセプトなどから名前を決定する手順を書いてみました。

ただし、上記のネーミングの手順は一例です。インスピレーションで決定するなど、それ以外の方法も考えられます。

上記のネーミングの手順のうち、一部でも参考になれば幸いです。

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デザインとアートの違い

【デザインとは】デザインとアートの違いからデザインの意味を考える

そもそもデザインとは何か?ということを考えていくと難しいものがあります。

デザインという言葉の意味が意外と広く、意味が抽象的で曖昧な印象だからです。

今回は、デザインとアートの違いを通じてデザインの意味を考えてみました。

1.デザインとアートの定義

1-1 デザインの定義

goo辞書(デジタル大辞泉) デザイン(design)の解説

(1)建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で、実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。「都市をデザインする」「制服をデザインする」「インテリアデザイン」

(2)図案や模様を考案すること。また、そのもの。「家具にデザインを施す」「商標をデザインする」

(3)目的をもって具体的に立案・設計すること。「快適な生活をデザインする」

(1)と(2)の意味が日本で一般的に使われている「デザイン」という言葉のイメージに合っています。

(3)の意味で「デザイン」という言葉が使われている場面も目にすることがあります。後述する「デザイン思考」の「デザイン」は(3)の意味に近い使われ方です。

1-2 アートの定義

goo辞書(デジタル大辞泉) アート(art)の解説

芸術。美術。「ポップアート」

辞書の説明がシンプル過ぎてデザインとの違いが明確ではありません。

辞書の定義からはデザインとアートの違いがわかりにくいため、別の角度からデザインとアートの違いを明確にしていこうと思います。

2.デザインとアートの違い

デザイン思考とアート思考

2-1 デザイン思考とアート思考

近年、新しいアイデアを生み出すための思考方法として注目されているのが「デザイン思考」と「アート思考」という考え方です。

「デザイン思考」とは、デザイナーによるデザイン制作における思考方法を用いて、新しいアイデアを生み出す思考プロセスのことをいいます。

「アート思考」とは、アーティストが作品を創り出す思考方法を用いて、新しいアイデアを生み出す思考プロセスのことをいいます。

両者を比較することで、デザインとアートの違いを考えてみます。

(a)デザイン思考

デザイン思考では、ユーザーを深く理解することにより、ユーザーの潜在的な課題にアプローチし、その課題の解決策を生み出します。

デザイン思考のプロセスにはいくつかの種類があります。

次に示すデザイン思考のプロセスは、Smart Stage「デザイン思考5つのステップ」の記事を参考にしました。

STEP1 共感

インタビューや行動観察を通して、ユーザーの悩みや課題を理解すること

STEP2 問題定義

ユーザーにとって本当の問題(課題)は何か、何を望んでいるかの概念化(言語化)

STEP3 創造

ユーザーの問題やニーズを解決するためのアイデア出し

STEP4 プロトタイプ

アイデアを実現するプロトタイプ(試作品)を一旦制作する

STEP5 テスト

プロトタイプに対するユーザーからフィードバックにもとづく改善・ブラッシュアップ

(b)アート思考

アート思考では、自分を起点に、価値観の再定義を繰り返しながら、自分なりの答えを描き出します。

アート思考のプロセスもいくつかの種類が提案されています。

次に示すアート思考のプロセスは、NTT DATA「アート思考~先行きが不透明な時代の思考法~」の記事を参考にしました。

STEP1 自分を起点にする

自分の些細な気づきや、違和感、小さな疑問等を大切にする。「正解は何か」ではなく、「自分がどう解釈したか」を起点にする。

STEP2 アウトプットする

言語だけでなく、身体全体を使って、感じたこと、思ったこと、考えたことをアウトプットしてみる。「正しい答え」ではなく、「自分なりの答え」を追求する。

STEP3 価値観を再定義する

アウトプットに対して、他の人からフィードバックを受ける。あるいは「もし他の時代だったら?」「他の文化圏だったら?」など、異なるコンテキストに置いてみる。自分が常識だと思っていた価値観を相対化することにより、新たな気づきを得て、価値観を再定義する。

(c)デザイン思考とアート思考の比較

デザイン思考ユーザー起点
アート思考自分起点
デザイン思考とアート思考の比較

デザイン思考では、ユーザーのニーズを起点にアイデアを創出するのに対して、アート思考では、実現性やニーズに関係なく、自分の自由な発想を起点にアイデアを創出します。

意匠法と著作権法

2-2 意匠法と著作権法

デザインを保護する法律として「意匠法」があり、アートを保護する法律として「著作権法」があります。

両者を比較することで、デザインとアートの違いを考えてみます。

(a)意匠法

意匠法の「意匠」の定義

「意匠」とは、物品の形状、模様、色彩、これらの結合(以下「形状等」という。)、建築物の形状等、又は画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう(意匠法第2条第1項)。

意匠法は、物品等の外観(形状、模様、色彩、これらの結合)を保護する法律です。

上記の意匠の定義には、ユーザーの視点が入っていません。

しかし、意匠法で保護を受けるためには、同一のものを量産できること(量産性)が必要であり、一品制作のものは意匠法で保護されません。この点で、一品制作の著作物も保護される著作権法と異なります。

このような観点から、意匠は多くのユーザーの目に触れる物品等に施されることが前提となっています。

「美感を起こさせるもの」には機能美と装飾美が含まれます。

機能美は、機能を追求した結果、美しくなることであり、 装飾美は、装飾を施すことにより美しくなることです。

意匠法では、見た目の美しさだけでなく、ユーザーの使い心地や使い勝手がよいものも保護されます。

(b)著作権法

著作権法の「著作物」の定義

「著作物」とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう(著作権法第2条第1項第1号)。

上の条文には誰の思想又は感情とは記載されていませんが、著作者(創作者)の思想又は感情を伴っていることが「著作物」と認められるための条件となります。

「著作者の権利」には、人格的利益 (精神的に傷つけられないこと)を保護するための「著作者人格権」と、財産的利益 (経済的に損をしないこと) を保護する「著作権(財産権)」の二つがあります。

著作物には著作者の思想や感情が色濃く反映されているため、第三者による著作物の利用態様によっては著作者の人格的利益を侵害するおそれがあります。このため、著作権(財産権)だけでなく著作者人格権も著作者の権利として認められています。

このように著作権(財産権)だけでなく著作者人格権も認めている点が、意匠権(財産権)だけを認めている意匠法と大きく異なります。

(c)意匠法と著作権法の保護対象の比較

意匠法多くのユーザーの目に触れる物に施されたもの
著作権法著作者の思想又は感情を創作的に表現したもの
意匠法と著作権法の比較

意匠法では、多くのユーザーの目に触れる物に施されたものを保護するのに対して、著作権法では、著作者の思想又は感情を創作的に表現したものを保護します。

2-3 ユーザーの求めているものを意識するか否か

以上の比較から、「デザイン」はユーザーが持つ問題を深く理解し、問題を解決することであると考えられます。

また、「アート」はアーティストが自身の興味・好奇心・疑問に対する答えを探究し、その答えとして思想・感情を創作的に表現することであると考えられます。

従って、「デザイン」と「アート」を分ける基準の一つは、創作する者がユーザーの求めているものを意識するか否かです。

3.ユーザーの求めているものとは?

デザイナーは、ユーザーが求めているものを考える必要がありますが、「ユーザーが求めているもの」が何かを探すことは簡単ではありません。

「ユーザーが求めているもの」について考えてみました。

3-1 シンプル

多くのユーザーに受け入れられるデザインとして、まず、シンプルなデザインが思い浮かびます。

シンプルなデザインは、必要な機能以外の無駄なものを可能な限り削ぎ落していく作業を行っていくことになります。

スティーブ・ジョブズも次の言葉を残しています。

Design is not just what it looks like and feels like. Design is how it works.
デザインは単にどう見えるかやどう感じるかではない。デザインはどのように機能するかだ。

3-2 個性

多くのユーザーに受け入れられるもの(万人受けするもの)を目指すと、個性がないものができてしまうおそれがあります。

個性がないものは面白くなく、結局、誰からも受け入れられないものになってしまいがちです。

価値観が多様化している現代、万人受けするものよりも特定のユーザーに強烈に受け入れられるようなものを目指すことが個性を出すための解決手段の一つです。

具体的なユーザー(ペルソナ)を想定し、そのユーザーに向けてデザインすることで、個性が出て結果的に多くの人に受け入れられるということもあり得ます。

3-3 ユーザーの求めているものを考えない

ユーザーの求めているものを考えすぎず、思い切って自分が好きなものを追求していくことが面白いデザインを創り出す手段の一つかもしれません。

ジブリの宮崎駿監督が「ヒットするかどうかを考えるとダメなんだ。そんなことを考えるとヒットしない」というようなことをテレビ番組(確か宮崎監督の密着ドキュメントのような番組)で言っていた記憶があります。

(正確な発言は忘れました。また、テレビ番組の動画を探してみましたが見つかりませんでした。すみません。)

上述したアート思考の考え方からすると、宮崎監督の発言は正解ということになります。あまりにもユーザー(映画の場合は観客)の欲求を考えすぎると、自分の価値観がぶれてしまいます。

デザインにも当てはまります。自分自身もユーザーの一人なので、自分の求めているものを追求することによって面白いものが出来上がるかもしれません。

4.まとめ

デザインとアートの本質的な違いについては、ある程度明確になったと思います。

しかし、良いデザインとは何かという問いに対しては、正直に言って正解が分かりません。正解がないのかもしれません。

結局、ユーザーのことを深く考え、自分の価値観を深く考えることが大事なんだと思います。

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ビジネスモデルとは

【ビジネスモデルとは】ビジネスモデルの定義・12パターン・細分化

このブログは新しいビジネスモデルを作るためのヒントを探ることを目的としています。

その前提として、以下の点を明確にしておく必要があると思い、今回の記事を作成しました。

  • そもそもビジネスモデルとは何か?
  • ビジネスモデルの典型的なパターン
  • ビジネスモデルの典型的なパターンの組み合わせ
  • ビジネスモデルのパターンの細分化
  • ビジネスモデルの差別化

新しいビジネスモデルを作るヒントになれば幸いです。

目次

1.ビジネスモデルの定義

ビジネスモデルとは、ビジネスの仕組みのことです。

もう少し詳しい説明としては、以下の解説が参考になります。

コトバンク ASCII.jpデジタル用語辞典の解説

事業で収益を上げるための仕組み。事業として何を行ない、ターゲットは誰で、どのようにして利益を上げるのか、という「儲け」を生み出すための具体的なシステムのこと。とりわけ、既存の事業形態とは異なるシステムをもつ、コンピューターやインターネットなどの情報ネットワーク技術を活用した新しいビジネス手法のことを指す場合もある。

2.ビジネスモデルの典型的な12のパターン

ビジネスモデルには典型的なパターン(型)があります。

典型的な12のパターン

(1)物販モデル

自身で商品やサービスを開発・製造し、顧客に提供して対価を得るというビジネスモデルです。最もシンプルで多くの方に馴染みのあるビジネスモデルのパターンです。

例えば、多くのメーカー、飲食店、コンテンツの販売などが該当します。

物販モデルの場合、魅力のある商品やサービスを開発することが成功の鍵になります。

コレクションモデルと呼ばれる、商品全体を部分的に販売していくビジネスモデルも物販モデルの一形態です。

DeAGOSTINI(デアゴスティーニ)のように、顧客に対して商品全体を一度に売るのではなく、商品を部分的に定期購読させることで商品全体を完成させる仕組みになっています。 複数巻で物語が完結する漫画の単行本などもコレクションモデルと言えます。

(2)小売モデル

自身で商品を開発・製造するのではなく、商品を仕入れて販売するというビジネスモデルです。これも多くの方に馴染みのあるビジネスモデルのパターンです。

例えば、コンビニエンスストア、ドラッグストア、家電量販店、書店などが該当します。

基本的に販売する商品が他社と同じになりますので、他社と差別化するためには、

  • 店舗の場所・立地(インターネット上のサイトも含む)
  • 価格
  • 商品の品数
  • 商品の希少性

などの特徴を出す必要があります。

また、ポイントを付与して顧客の囲い込みを行うことが一般的に行われています。

(3)合計モデル

顧客の目当ての商品やサービスと一緒に様々な商品やサービスを販売して、合計の販売価格を引き上げるビジネスモデルです。一人当たりの客単価まで引き上げることができます。

例えば、居酒屋では、生ビールは格安で提供するが、他の料理や飲み物をオーダーしてもらうことで客単価を上げています。

また、100円ショップでは、目当ての商品を買うつもりでお店に行ったにもかかわらず、他の商品を見ているうちに「ついで買い」をしてしまいます。

(4)消耗品モデル

大元となる商品やサービスの販売後、その商品やサービスの利用を継続するための消耗品やメンテナンスで利益をあげるビジネスモデルです。

家庭用のプリンターが典型的な消耗品モデルです。

メーカーはプリンター自体で利益をあげるのではなく、プリンターを継続的に利用するためのインクカートリッジを販売することで利益をあげています。

(5)卸売モデル

メーカーと小売業の間に位置し、メーカーから商品を仕入れ、小売業に商品を販売するビジネスモデルです。中間流通業や問屋とも呼ばれます。

卸売は、メーカーと小売業との間の物流コストや受発注、商品の保管等に伴う業務負担を軽減する役割を果たしています。

(6)継続課金モデル

顧客に月や年などの単位で継続的に課金してもらうことで、商品やサービスを提供するビジネスモデルです。

継続課金モデルには、一定の金額(定額)を課金する定額課金方式や、利用量に応じて金額が変動する従量課金方式、一定の範囲内までは定額でそれを上回ると追加料金が発生する定額従量方式などがあります。

一定期間の利用権として定期的に料金を支払うサブスクリプション方式も継続課金モデルの一種です。 継続課金モデルの種類については、「課金システムを選ぶポイント|継続課金?都度課金?」をご参照ください。

(7)レンタルモデル

商品を貸し出すことにより利益を得るビジネスモデルです。

レンタルDVDやレンタカーなどが代表的なレンタルモデルです。

(8)マッチングモデル

商品やサービスを提供する事業者と顧客とをつなげることで手数料を得るビジネスモデルです。

例えば、不動産仲介、求人サイト、ホテル予約サイトなどが該当します。

(9)広告モデル

媒体に広告を掲載することで広告料金を得るビジネスモデルです。

例えば、テレビや新聞、雑誌、Webサイト、SNSなどが該当します。

(10)ライセンスモデル

権利を持っている者が第三者に権利を使用させることで、第三者から権利の使用料を得るビジネスモデルです。

権利としては、著作権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの知的財産権が一般的です。

例えば、特許権を取得し、第三者に特許に関する商品を製造・販売させる権利(ライセンス)を許諾することにより、第三者から実施料(ロイヤリティ)を得るような場合です。

肖像権を使用させて使用料を得る場合もあります。

フランチャイズも似たような形態のビジネスモデルです。

フランチャイズは、一定の実施料を企業本部に支払って商号・商標の使用権や販売ノウハウなどの使用許諾を取得し、店舗経営を行うビジネスです。

〇〇協会や家元制度なども、資格(ライセンス)を与えてライセンス料を得ていますので、ライセンスモデルに近いビジネスモデルです。

(11)二次利用モデル

一度作ったコンテンツを別の形態で再販売するビジネスモデルです。

例えば、テレビ番組をDVD化して販売したり、ヒット曲を集めたベストアルバムを販売するような場合が該当します。

(12)フリーミアムモデル

サービスを無料で利用させることで利用者を集め、一部の有料サービスを販売して利益を得るビジネスモデルです。

インターネット上のサービスの多くはフリーミアムモデルを採用しています。

3.プラットフォームのビジネスモデル

「プラットフォームビジネス」とは、企業や個人などのプレイヤーが参加する(集まる)場所「プラットフォーム(基盤、土台)」を提供する、主にIT企業が展開するインターネット上のサービスのことです。

プラットフォームを提供する事業者のことを「プラットフォーマー」と言います。

プラットフォーマーとしては、GAFAM(Google・Apple・Facebook・Amazon・Microsoft)が代表的です。GAFAMのような世界的な大企業だけでなく、様々なプラットフォーマーがプラットフォームビジネス(サービス)を展開しています。

(1)Amazon

Amazonは、初期の頃は書籍(本)を仕入れて販売することだけをインターネット上のサイトで行っていました。

その後に、Amazonは様々な商品を販売するようになりますが、基本的には商品を仕入れて販売するという小売モデルです。

Amazonは2002年にクラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」を開始し、「Amazonマーケットプレイス」(Amazon以外の出品者が販売している商品の売場)を開始します。また、Amazonは2007年にAmazonプライムという会員制プログラムを開始します。これらは継続課金モデルのビジネスモデルです。

Amazonは様々な商品・サービスを取り扱っており、2016年の時点で取り扱っている品目数はマーケットプレイスを含めると3億5371万品目以上となるそうです。今(2021年)は確実にそれ以上の品目数でしょう。

(2)楽天

楽天は1997年に楽天市場を開設します。楽天市場はインターネット上のショッピングモールです。

実世界のショッピングモールは不動産賃貸業に分類され、ショッピングモール内のスペースをテナントに貸し、賃料を収受するビジネスモデルです。また、一般的にショッピングモールの賃料はテナントの売上高に連動する売上歩合制賃料が採用されています。

このような実世界のショッピングモールをインターネット上に作ったのが楽天市場です。ビジネスモデルとしては継続課金モデルに該当します。

その後、楽天は銀行、証券会社、カード会社などを買収することで、独自の楽天経済圏を形成することになります。

楽天が金融系に強いのは、創業者の三木谷氏が銀行出身であることが影響していると思われます。

(3)オンラインサロン

オンラインサロンとは、Web上で展開される会員制コミュニティのことです。

オンラインサロンを運営する事業者(運営者)は、サロンの主催者と会員とをつなげるマッチングサービスを提供しています。しかし、事業者は会員からの会費の一部を収益としていますので、収益を得る手段としては継続課金モデルになります。

(4)クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」ことを指しています(「クラウドファンディングとは?」を参照)。

クラウドファンディングを運営する事業者(運営者)は、起案者(出資を希望する者)と支援者とをつなげることで手数料を得ていますので、ビジネスモデルとしてはマッチングモデルになります。

(5)note

noteは文章、写真、イラスト、音楽、映像などの作品を配信するWebサービスです。

noteは文章や画像などを配信することができる点で無料ブログと似ていますが、ビジネスモデルは無料ブログと大きく異なります。

ブログは、もともと月額数百円程度の継続課金モデルでした。ブログを運営する事業者が増えてくると、会員数を増やすためにブログサービスを無料で提供し、広告を掲載することで収益をあげる広告モデルに移行しました。

noteは会員がコンテンツを販売できるコンテンツ配信サービスです。ビジネスモデルとしては、売上金額から決済手数料を引いた額の10%をプラットフォーム利用料として徴収する課金モデル(従量課金)となります。

また、会員は基本的なnote内の機能は無料で利用できますが、高度な機能を使うためには月会費を支払います。これはフリーミアムモデルとなります。

本を出版することなどによるコンテンツの販売は、ユーザーにとってハードルが高いですが、noteであれば気軽にコンテンツを販売することができます。

コンテンツを販売したいユーザーが集まってきますので、相対的に質の高いコンテンツが配信されることになります。これがnoteが成功した理由であると考えます。

4.パターンの組み合わせ

上記のように、企業は既存のビジネスモデルのパターンを組み合わせることによりビジネスモデルを構築していることがわかります。

また、ビジネスモデルのパターンを組み合わせることによりマネタイズのポイントを増やしています。

ビジネスモデルのパターンの組み合わせ方によって面白いビジネスモデルが生まれるかもしれません。

5.パターンの細分化

ビジネスモデルを12のパターンに分類しましたが、12のパターンそれぞれは細分化されます。

例えば、製造メーカーと飲食店が同じ物販モデルと言われても違和感があるかもしれません。

また、同じ飲食店であってもサービスの提供の仕方は様々です。

12のパターンは細分化され、細分化されたものが細分化され、さらに細分化されたものが細分化される、というように無限に広がっていきます。

どこまで細分化すればよいのかがわからなくなってしまいます。

細分化のイメージ図
細分化のイメージ図

6.差別化されたもの

このブログは新しいビジネスモデルを作るためのヒントを探ることを目的としています。

この目的に照らして、私は「他のビジネスモデルと差別化され、差別化された部分に対して需要があるもの」を新しいビジネスモデルと考えています。

このブログのビジネスモデルに関する記事は、このような考えに基づいて書いています。

カテゴリー「ビジネスモデル」の記事一覧

ビジネスモデルを生み出す手順

【新しいビジネスモデルを生み出す手順】基本パターン

新しいビジネスモデルはどのようにして生まれるのか?

新しいビジネスモデルを生み出すために必要なことは、既存のビジネスモデルの課題(問題点)又は潜在的なニーズを見つけることです。

その課題又は潜在的なニーズを見つけ、その課題又は潜在的なニーズを解決する方法を見つけることができれば、新しいビジネスモデルを作ることができるチャンスです。

今回の記事が少しでも新しいビジネスモデルを生み出す参考になれば幸いです。

今回の記事では、「顧客(消費者)に対してサービスを提供するビジネスモデル」を想定しています。

目次

新しいビジネスモデルを生み出す流れ

ステップ1:既存のビジネスモデルの調査・分析

既存のビジネスモデルの調査・分析を行うことが第1のステップです。

ビジネスモデルの研究者になるわけではないのですから、既存のビジネスモデルについて手当たり次第に調査・分析するのは効率が悪いように感じます。

一般的には、専門的な知識のある分野、他の人よりも詳しい分野、興味・関心のある分野などのビジネスモデルを調査・分析することから始めます。

ここでいう調査・分析は、ビジネスモデルの課題(問題点)潜在的ニーズを探すための調査・分析のことをいっています。

ステップ2:既存のビジネスモデルの課題(問題点)又は潜在的なニーズの発見

既存のビジネスモデルの課題(問題点)又は潜在的なニーズを発見することが第2のステップです。

ステップ2-1:課題(問題点)の発見

なお、第1のステップの「既存のビジネスモデルの調査・分析」を行う前に、既存のビジネスモデルの課題を発見する場合もあり得ます。この場合は、第1のステップの「既存のビジネスモデルの調査・分析」を省略することができます。

現在、一般に行われているビジネスモデルには必ず何か課題(問題)は存在します。

ここでいう「課題(問題点)」は顧客から見た場合のサービス(ビジネスモデル)の課題(問題点)のことです。顧客がサービスに対して持つ不便さや不満のことです。

例えば、スーパーマーケットのレジ待ち時間の問題があります。

私がよく行っているスーパーでは曜日や時間帯によっては、レジの前に長い行列ができています。その時間帯はすべてのレジに店員が配置されていますし、レジ係の店員も一生懸命レジ打ちをやっています。しかし、曜日や時間帯によってはお客さんの数とレジの数が合っていません。

このような問題点を解決する一つの方法がレジ無し店舗の「Amazon Go」です。「Amazon Go」は、アマゾンが展開する「食品小売店」で、日本のコンビニエンスストアのようなものです。

また、巨大なホームセンターで目的の商品を見つけるのが困難です。

店員さんに商品の場所を聞くのが一般的ですが、店員さんがなかなか見当たらない場合があります。また、店員さんが他のお客さんに対応している場合は、お客さんへの対応が終わるまで待っていなければなりません。

大きな書店や図書館、レンタルビデオ店などには、商品の検索システムがありますが、私が知っているホームセンターでは、そのような検索システムがありませんでした。

このような問題点を解決する一つの方法がホームセンターのカインズ(CAINZ)が提供するカインズアプリです。

カインズアプリは、顧客が登録した店舗における商品の在庫をアプリで見ることができるとともに、「お気に入りの商品」を登録すると商品の売場がアプリで見ることができます。さらに、購入時にレジでアプリの「会員証画面」を提示することでポイントを貯めることができます。

今あげた例は、私が今思い浮かんだものですが、多くの既存のサービスには改善の余地があると思います。

既存のビジネスモデルの課題を発見するためには、常に問題意識を持つことが必要です。少しでも不便や不満を感じたことがあれば、それがヒントになる可能性があります。 そのようなちょっとした気付きも、すぐに忘れてしまいますので、何か感じたらメモしておくことも重要です。

不満買取センター」というサービスがあります。

この「不満買取センター」は、企業の商品やサービスの不満を顧客(消費者)から買い取るサービスです。

不満を提供してくれた顧客にはポイントを与え、顧客から集めた商品やサービスの不満を企業に売ります。企業は、不満買取センターからの不満のデータをもとに商品やサービスの開発・改善に利用します。

「不満買取センター」というサービス自体が新しいビジネスモデルですが、企業は顧客の不満を商品やサービスの開発に役立つ重要な情報として考えています。

ステップ2-2:潜在的ニーズの発見

顧客(消費者)は既存のサービスが当たり前のことだと思い、既存のサービスに対して不便さや不満を感じていないこともあり得ます。つまり、顧客は本当に求めているニーズ(潜在的なニーズ)に気付いていない場合が多いものです。

ペットを飼いたいと思っている人は、犬や猫が好きでかわいいから飼いたいと思っているかもしれませんが、普段ストレスを感じていて、本質的には心の安らぎを求めているのかもしれません。

かっこいいスポーツカーを買いたいと思っている人は、女性にモテたいと思っているのかもしれません。

顧客が持っている潜在的なニーズを発見することで、異なるアプローチで顧客の潜在的ニーズを満足させるような新しいビジネスモデルを生み出す可能性がでてきます。

・何かひらめきのようなものによって既存のビジネスモデルの課題を発見することがあるかもしれません。

・また、特定の分野について専門的な知識を有する人は、いち早く既存のビジネスモデルの課題を発見することがあります。

・また、さまざまなことに興味を持ち、ビジネスの感性が豊かな人は、他の人よりも早くビジネスモデルの課題や顧客(消費者)の潜在的ニーズに気付くことがあるかもしれません。

他の人よりも早く課題や潜在的ニーズを発見した場合、新しいビジネスモデルを事業に発展させるチャンスです。

ステップ3:新しいビジネスモデルの需要及び課題解決手段(ソリューション)の検討

新しいビジネスモデルの需要及び課題解決手段(ソリューション)を検討することが第3のステップです。

なお、このとき、第1のステップの「既存のビジネスモデルの調査・分析」が不十分な場合、もう一度、詳細に調査・分析する必要があるかもしれません。

誰よりも早く既存のビジネスモデルの課題を発見できればよいのですが、多くの場合、すでに他の人が既存のビジネスモデルの課題に気付いています。

既存のビジネスモデルの課題が存在するにもかかわらず、その課題を解決(クリア)したビジネスモデルが普及していない場合、次のようなケースが考えられます。

  • 新しいビジネスモデルの需要がない(あるいは需要が少ない)
  • 課題を解決するのが困難

・新しいビジネスモデルの需要がない(あるいは需要が少ない)。

新しいビジネスモデルを考え付いても、そのビジネスモデルの需要(ニーズ)がない、あるいは需要が少ない(狭い顧客層の需要しかない)場合があります。

また、新しいビジネスモデルを実現するための費用や労力に見合った需要がない場合(費用対効果が合わない場合)も考えられます。

このような場合は、別のビジネスモデルのアイデアを検討した方がよいかもしれません。

しかし、需要は時代によって変化しています。

例えば、今はさまざまな商品やサービスの利用形態にサブスクリプション方式が取り入れられています。

サブスクリプションは、商品やサービスごとに購入金額を支払うのではなく一定期間の利用権として定期的に料金を支払う方式のことです。

今は、物を所有するよりも必要な時だけ使えればよいと考える人が増えたので、サブスクリプションが商品やサービスの利用形態として多く利用されるようになったのだと思われます。

例えば、現在、美容や脱毛に関心のある男性が増えています。ひと昔前ならそのようなサービスを求めている男性は少なかったでしょう。

実際のところ、新しいビジネスモデルの需要(ニーズ)があるか否かを判断するのは難しいです。需要があるか否かはやってみないと分からないところもあります。

顧客の利益と需要との関係

一般的には、新しいビジネスモデルによってもたらされる顧客(消費者)の利益が高い程、新しいビジネスモデルの需要が高くなる傾向があります。

新しいビジネスモデルによって顧客(消費者)に対して高い利益(価値、利便性)を如何(いか)に提供することができるかが鍵になります。

・課題を解決するのが困難

課題を解決するための技術的なハードルが高い場合があります。

例えば、スーパーでAmazonGoのようなサービスを実現するのは現在では難しいかもしれません。

しかし、技術は日々進歩しています。数年前まで実現することが困難なものが現在は実現することが可能になっているものがあります。また、現在は実現することが困難だったとしても数年後には実現することが可能になっているかもしれません。

例えば、「タイミー」というサービスをテレビのCMで見ました。「タイミー」は、働きたい時間と働いて欲しい時間をマッチングするスキマバイト募集サービスです。

隙間時間に働きたい人と、隙間時間でも働いてほしい会社は以前から存在していました。マッチングの技術が進歩したことによって、このようなサービスが実現できたものと思われます。

このように技術的な課題をクリアできたとき、新しいビジネスモデルを生み出す大きなチャンスとなります。

また、法律の規制によって新しいビジネスモデルの課題を解決することが困難な場合もあります。

しかし、法律の規制も徐々に緩和されています。

例えば、今は民泊の事業が一般的に行われていますが、昔よりも民泊に対する規制が緩和されたことにより民泊の事業を行う会社が増えました。

法律の規制が緩和されたとき、新しいビジネスモデルを生み出す大きなチャンスとなります。

・潜在的ニーズを満足させる異なるアプローチ

既存の手法とは異なるアプローチで顧客の潜在的ニーズを満足させることができれば、需要の多いビジネスモデルを創り出すことがでてきます。

ペットを飼いたいと思っていても、一人暮らしだったり、賃貸マンションに住んでいれば、なかなかペットを飼うことができません。

しかし、ペットを飼いたいと思っている人が本質的には心の安らぎを求めているのであれば、ペット以外の別の手法で心の安らぎを提供できれば、そのような人に対する需要があることになります。

例えば、ソニーの犬型ロボットaiboは、生きているペットの代替手段としてなり得ます。また、心の安らぎを提供するような強力なコンテンツを創り出せれば、需要の多いサービスを提供することができるかもしれません。

ステップ4:新しいビジネスモデルの構築

実際に新しいビジネスモデルを構築することが第4のステップです。

新しいビジネスモデルに対する需要があり、課題や潜在的ニーズを解決する手段を見つけた場合は、新しいビジネスモデルを構築する作業に入ります。

このとき、あらためて既存のビジネスモデルを調査・分析することが必要になります。ここでいう調査・分析は、主に既存のビジネスモデルを利用して新しいビジネスモデルを構築することができるかどうかという観点からの調査・分析です。

  • 新しいビジネスモデルを構築(実現)する場合、既存の技術の組み合わせや改良で実現可能か、新たなシステムの開発が必要か
  • 新しいビジネスモデルを構築する場合の資金は少なくて済むか、多くの資金がかかるか
  • 新しいビジネスモデルを一人で構築することが可能か、複数人で構築する必要があるか、大人数でなければ無理か

などによって難易度が変わります。

ビジネスモデルの形態によって異なりますが、このステップ4の作業が最も困難な作業になる可能性が高いです。

一人で無理ならば仲間や知り合いに頼んだり、外部に依頼する(外注する)ことも考慮する必要があるかもしれません。

多額の資金がかかる場合、自分で資金を調達するのがベストですが、現在はベンチャーキャピタルの投資に頼ることも一般に行われています。ベンチャーキャピタルが投資してくれるのであれば、新しいビジネスモデルが優れたアイデアに基づいたものである可能性が高いことになります。

このように、状況によっては、大変な作業になりますが、大きなチャンスが見えているのであれば、やるしかないでしょう。

まとめ

今回は、既存のビジネスモデルの課題や顧客の潜在的ニーズからビジネスモデルを生み出す方法を紹介しました。

ステップ1~ステップ3の作業は、自分で調べたり、自分の頭の中で考えたりすることで実行可能なものです。当然、コストがかかるわけではありません。

複数のアイデアを温め、その中から最も良さそうなものを選ぶのがよいのかもしれません。

ステップ4の作業は、実際にビジネスモデルを構築する作業ですので、さまざまなハードルがあるかもしれません。ビックチャンスが想像できているのであれば、やりきるしかありません。

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